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IBMがブロックチェーンデプロイメントのためのクラウドサービスをローンチ

原文(投稿日:2016/08/20)へのリンク

IBMは先日,ブロックチェーン技術の採用を検討する企業向けのクラウドサービスを発表した。現在は限定ベータ版であるこのサービスは,ブロックチェーン処理の基盤となる一連のサービスを提供する,IBM LinuxOneプラットフォームが支えている。IBMはこのプラットフォームを,ブロックチェーンプロジェクトのテストと運用のためのセキュアな環境を必要とする,規制産業の企業向けとして位置付けている。

ブロックチェーンは,取引関係や識別,出所,信頼,セキュリティ,トランザクションに依存した多くの従来型産業を破壊する可能性を秘めた,新しい技術だ。Northwest Passage VenturesのCEOで著作者のAlex Tapscott氏は,この技術を次のように評している

“匿名性と安全性を備え,手軽で確実なトランザクションを実現する,独創的でシンプル,かつ革新的なプロトコルです。マス・コラボレーションや巧妙なコード,暗号化を駆使して,高能力な中間層からの信頼情報を大規模なグローバルネットワークに分散することで実現されているブロックチェーンは,ネットワークで発生したすべてのトランザクションを対象とする公開台帳を現実のものにします。”

IBMのブロックチェーンサービスは,プライベートかコンソーシアムベースかを問わず,ブロックチェーンプロジェクトへの企業参加を可能にする。ブロックチェーンクラウド環境を基盤プラットフォームとしてサポートする同社のLinuxONEプラットフォームは,APIをホストし,スマートコントラクト,暗号プロトコル,台帳の共有,コンセンサスアルゴリズムなどを提供するプラットフォームである。“IBM z13 LinuxONE Emperorモデルは,8,000仮想マシンあるいは数千コンテナにまでスケールアップ可能”だ,とIBMは説明している。先日のInterConnect 2016でのプレゼンテーションでは,IBMフェローのDonna Dillenberger氏が,このパフォーマンスがIBMに競争上の優位性をもたらすという考えを示した

“ブロックチェーンではハッシュが重要です。エントリが(検証されて)削除不可能であることを確認する手段がハッシュなのです。IBM z上のハッシュは,他のプラットフォームよりも5倍高速です。また当社の暗号プロトコルは,他のプラットフォームよりも5~6倍高速です。”

イメージ(スクリーンショット)引用元: https://www.youtube.com/watch?v=8xBrjf05b-w

ビジネスの変革にIBMのブロックチェーンサービスを利用している企業もある。そのひとつがEverlegerだ。同社がIBMプラットフォーム上にブロックチェーンアプリケーションを構築した目的は,

“サプライチェーンを通じて貴重なアイテムを追跡し,供給者,購入者,出荷者の盗難や偽造,その他の破損からの保護を支援します。ブロックチェーンはダイアモンド,美術品,高級品など,高付加価値品の出所の証明にも使用されています。”

Everlegerの創業者でCEOのLeanne Kemp氏は,IBMのブロックチェーンプラットフォームには自身のビジネスを変革する可能性がある,と説明する。

“セキュリティリッチなインフラに支えられたIBMブロックチェーン上で,Everledgerを構築,テスト,スケールアップ,洗練する機会を得たことが大きな転機となりました。当社の対応能力の俊敏さを向上すると同時に,世界中のパートナに対して,最も革新的なソリューションを内密に提供することが可能になったのです。”

Everledgerだけでなく,IBM社内でもブロックチェーン技術の評価を行なっている。IBM Global Financingでは,世界中の4,000を越えるパートナとサプライヤを対象とした,融資のためのチャネルを提供している。クレジットラインが必要なパートナは,IBM Global Financingを通じてそれを取得することによって,IBMのグローバルサプライチェーンのサプライヤからの購入が可能になる。2014年中には,290万以上のトランザクションを通じて440億ドル以上の資金を提供している。

IBMのビジネスラインでは毎年25,000を越える争議が発生し,その解決に平均で44日と31,000ドルが費やされている。プロジェクトの目標は,この争議の数と,解決に必要な時間を減少させることだ。さらにプロジェクトでは,これら紛争の対応に費やされているおよそ1億ドルを削減することで,事業経営に必要な運転資金の低減を目指している。IBMでは,ブロックチェーン全体で利用可能な単一かつ分散的なビューを実現した分散型台帳をパートナとサプライヤに提供して,これらのコスト削減を達成したいと考えている。これはつまり,商品の出荷と受入がブロックチェーンに記録されるとともに,当事者双方がこれらのトランザクションを同じ視点で見ることができる,ということだ。

イメージ(スクリーンショット)引用元: https://www.youtube.com/watch?v=F0P7NM7d-ps

ブロックチェーン構築サービスを提供しているパブリッククラウドプロバイダはIBMだけではない。 2015年11月にMicrosoftは,Microsoft Azureのサービス(BaaS)としてEthereum Blockchainを発表した。さらに先日には,識別,暗号化,ゲートウェイ,データサービス,管理などの機能に対応する,モジュール型のブロックチェーンミドルウェアサービスであるProject Bletchelyを発表している。同社はさらに,トランザクションやスマートコントラクトを実行するための,セキュアで信頼性のあるホストを提供するCryptletも発表した。

 
 

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