テクノロジの世界にいる我々は、常に革新し、新たな領域へと進まなくてはならない。そのために、さまざまな世界の人々を雇用し、話を聞き、関係を保つことなくしては、能力を最大限に引き出すことは不可能だ。少数集団を積極的にサポートして活用しているハイテク産業は、すべての人にとって好ましい産業だ。多様性を受け入れ、包容性を備えた環境を育むことによって、企業の収益も改善される。
Women Who Codeグローバルアンバサダに任命されたSheree Atcheson氏がWomen in Tech Dublin 2018で講演し、多様性と包容性を持つこと、よりよいリーダになることについて話した。InfoQではこのイベントを、Q&Aや記事を通じて紹介している。
多様性の受け入れにはビジネス上のメリットがある、とAtcheson氏は言う。性別に関する多様性において上位4分の1にある企業は、競合他社に比較してパフォーマンス面で15パーセント上回る。民族的な多様性における上位4部の1では、競合他社を35パーセント上回る。
多様性を受け入れ、包容性を備えた環境を促進することにより、収益が改善するという、明らかな研究結果がある。これをAtcheson氏は、“さまざまな声を聞き、リスクを排除し、特定の集団ではなく、広く大衆の気持ちを念頭に置いた製品を開発するため”だ、と説明する。同じ理由から、取締役会に女性がひとりいることで、倒産リスクを20パーセント低減することが可能になる、と氏は言う。
ミドルマネジメントは、チームのリードの方法やチームの行動や運用に対する期待の方法など、仕事のやり方を変える上で、前向きな変化を起こす大きな力を持っている、とAtcheson氏は言う。それは例えば、さまざまな人々が異なる仕事のやり方を望んでいることを理解したり、すべての人たちにとって適切なようにイベントを整理したり、あるいはチームが望むことや行動について単に聞く、ということだ。
多様性の容認と包容性の促進に関して、Atcheson氏に聞いた。
InfoQ: あなたはWomen Who Codeのグローバルアンバサダですが、Women Who Codeの目標と現在の活動について教えてください。
Sheree Atcheson: Women Who Codeは、技術的キャリアに秀でた女性を対象とした、世界最大の非営利団体です。世界中に167,000人以上のメンバがいて、60を超えるサイトが存在しています。世界中で地域ネットワークが技術、キャリア、教育に関するイベントを開催し、週毎に実施されるCODE Review Newsletterを通じて無料チケットやスカラシップの機会をメンバに提供しています。業界の女性による、プロフェッショナルとしてのサクセスストーリも紹介しています。
私たちはここで、女性としてのアイデンティティを明らかにし、ディジタル世界での信頼を育み、技術的スキルを向上させる場所を提供しています。Women Who Codeを通じて、今日の、明日の、さらには将来のリーダを育てているのです。
InfoQ: 多様性は性に関するものに限らず、多くの方法で顕在化しています。どのような形で現れるのか、多様性をより広義に捉えるにはどうすればよいのか、詳しく説明して頂けますか?
Atcheson: 多様性には性別や民族、能力、地域、社会経済的バックグラウンド、性的指向に至るまで、さまざまな局面があります。そのことを忘れず、すべての異なる層にリーチできるような、境界を越える戦略が必要です。多様なチームは多様な製品を生み出し、多様な製品は最終的なソリューションを獲得する上で、複数の観点とアイデアを持つという意味において、より優れた存在なのです。
InfoQ: 多様性の向上が、イノベーションの収益向上に結び付くのはなぜでしょう?
Atcheson: 従業員が、“自身の組織は多様性を尊重し、支援し、自分たちが受け入れられていると考える”のであれば、イノベーションの収益は83パーセント向上します。これに加えて、管理チームに平均を上回る多様性が報告されている企業では、リーダーシップの多様性が平均以下のグループよりも19パーセント高いイノベーション収益が報告されています。私たちはテクノロジの世界にいるのですから、常に革新し、新たな領域に進まなくてはなりません。さまざまな世界の人たちを雇い、話を聞き、関係性を保つことなしには、能力を最大限に活用することは不可能です。先ほど述べたように、私たちの住む社会を直接代表するような人たちがチームにいなければ、社会一般に向けたプロダクトを作り出すことはできません。
InfoQ: 中間管理層を巻き込んで、多様性や包容性に対して積極的な役割を果たしてもらうように説得するには、どうすればよいのでしょうか?
Atcheson: これはアレイシップ(allyship)に関わる問題です。ゼロサムゲームではありません – 少数集団を積極的にサポートし支持しているハイテク産業は、自身が少数派とは考えない人たちも含むすべての人々にとって、より好ましい産業です。
少数集団は一般的に、中間層ないし地位の低い役割に置かれています。それはつまり、(役員レベルではない)中間管理層による管理の下で毎日の仕事を行っている、ということです。彼らがD&I戦略の恩恵を最大限に感じられるようにするには、マネージャが直接関与しなくてはなりません。
InfoQの記事“より平等な職場を作る”では、Kate Heddleston氏が、アクセス機会の平等を実現する上で、企業が適用可能なプロセスについて述べている。
このプロセスは3つの質問からなります。
- チームの全員が平等にアクセスするべきものは何か?
- イコールアクセスが妨げられることによる、すべてのメリットとデメリットは何か?
- アクセスの不平等を把握し、低減するにはどうすればよいか?
企業内でこの3つの質問をするにあたって、皆が等しく参加できて職場の不平等に対処するためのアイデアを提案できる安全な場所として、ブレインストームの使用をHeddleston氏は提案している。
Atcheson: 私たちに必要なのは、あらゆるレベルの企業が多様性と包容性の方策に参加することです。方策が直接影響しない人たちも参加して、成功を目指すことが必要なのです – 彼らには協力者(ally)として、少数コミュニティを目に見えるものとし、建設的な批判をし、少数派の人たちが成長して次のレベルに達し、最終的には自身の仕事におけるチャンピオンになることを支援する能力があるのです。
私はよく特権について講演します。特に、私自身の特権について話します私は基本的に女性として認められ、有色人種で、西洋風の名前を持ち、生後3週間でスリランカで養子になり、大学に通いました。裕福ではありませんでしたが、快適な暮らしでした。これはつまり、私は人生でたくさんの特権を持っていて、周りの人たちを力づけるために使うことができる、という意味です。他の皆さんにも、自分の持つ特権を認識してほしいと思います。それは目を見張るほど力強いものなのです。
InfoQの記事“特権を貸すことで多様性と包摂性を促進する”では、Anjuan Simmons氏が特権を貸すための3つの方法を紹介している。
- 信頼性の貸与: 例えば、権限の低い人たちを次回の理事会に招待するなどして、知名度を貸す。
- アクセスの貸与: 例えば、自分がアクセス権を持ち、知識を共有するエントリを提供可能な会議に誰かを出席させる。
- 知識の貸与: 例えば、ある人を自分の次期プロジェクトのリーダに任命する。
以前のInfoQのインタビューで、Peter Atiken氏は、我々の言葉と行動をより包容的なものにするための提案を述べている。
集団でも個人でも、私たちは、私たちよりも権利の少ない人たちの苦難をもっと理解する必要があります。学習に関しては、ソーシャルメディア上で自分たちとは異なるバックグラウンドを持つ人たちをフォローし、彼らの苦労を学ぶべきです。
私たちがいつ間違っているのか、いつ内省的に振る舞うべきなのか、もっと意識をしなければなりません。
- 私たちが言ったり行ったことで誰かが動揺したり、傷付いたりするのはなぜか?
- 将来的にもっとうまくできるだろうか?
- どのように償えばよいのだろうか?
新たな理解を共有することによって、私たちはお互いをもっと高める必要があります。この行動によって、私たち自身が不完全な存在であり、より改善を目指しているという事実を、ありのままに受け入れられるようにするのです。
InfoQ: より包容的な環境を作り出すためにできることは何でしょう?
Atcheson: 聞くことです。周りの人たちが語ることに耳を傾けてください。不快さを受け入れて、自分が常に正しいとは限らないということを知るのです。受け入れて、それに対応しましょう。考えを変えるのです。私はいつも自分の言葉と行動を – ほぼ毎日、チェックしています。間違いがあれば、人間であれば当然のこととして、謝罪し、自身をチェックして前に進みます。
具体的な行動については、セッションのスライドを参照してください。
出典:
取締役会に女性がひとりいることで、倒産リスクを20パーセント低減することが可能になる – リーズ大学ビジネススクールの調査結果(アクセス有償)、Quartzの記事 “It’s dumb not to fill your company’s board with women”より
従業員が“自身の組織は多様性を尊重し、支援し、自分たちが受け入れられていると考える”ことで、イノベーション収益が83パーセント向上する – Deloitte Australia(Deloitte)、Victorian Equal Opportunity and Human Rights Commissionの記事 “Waiter, is that inclusion in my soup? A new recipe to improve business performance”より
管理チームに平均を上回る多様性が報告されている企業では、リーダーシップの多様性が平均以下のグループよりも19パーセント高いイノベーション収益が報告されている – Consultancy.uk “management team diversity linked to improved financial performance once more”より
性別に関する多様性において上位4分の1にある企業は、競合他社に比較してパフォーマンス面で15パーセント上回る。民族的な多様性における上位4部の1では、競合他社を35パーセント上回る – マッキンゼー “why diversity matters” より
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