原文リンク(2023-06-01)
テクノロジーが私たちの生活に果たす役割はますます大きくなっているが、Big Techと呼ばれる大手テック企業はその理念とは相反する行動を見せ、制御不能に陥っているように見受けられる。規制は整備されつつあるが、法律が適用されることはほとんどない。大手テック企業のリーダーは、自分たちの仕事が文化であることに気付くべきだ。QCon London 2023では、Andy Walker氏が、彼らがなぜ道を踏み外したかついて講演した。
Walker氏は、大手テック企業の焦点が年々変化していることに言及した。Google創業者のメッセージには、彼らが作ろうとしている会社について非常に具体的に記述されている。これまでのような、長期的な投資を行い利益と社会的利益を両立させるような会社ではなく、社員のためにベストを尽くす会社でありたいのだ。さらにAmazonやMetaの創業者メッセージを見ると、似たようなことが書かれているとWalker氏は述べた。
これらの企業は、長年にわたり信じられないほどの利益を上げてきたが、おそらく、並外れた成長期の終わりに近づいているのだろうとWalker氏は述べた。今、私たちは、アクセスを遮断することによって、人々が一斉に解雇されるのを見ているが、これは、この原則と完全に矛盾しているように思える。
かつては、大手テック企業は単なる大企業ではない、と合理的に主張できた時代もありましたが、今はそうも言っていられないでしょう。
Walker氏は、問題の大部分は、規制が長年にわたって強化されなかったことにあると述べた。欧州圏がテック企業と連携してGDPRをまとめ、プライバシーに関する実に合理的な法律ができたことを紹介した。
適用されるかどうかはまだわかりませんが、法的枠組みや、制度もある（1000万ユーロまたは世界売上高の2％）。
Walker氏は、大手テック企業のリーダーは、自分たちの仕事が文化であることを認識すべきだと主張した。そして、社員がベストを尽くせるような環境を作ることを提案した。
あなたがリーダーであるなら、あなた自身がイノベーティブである必要はない。リーダーの仕事は、イノベーションを可能にすることである。
InfoQは、Andy Walker氏に、規制、言論の自由、そして、大手テック企業の未来についてインタビューした。
InfoQ: 規制の現状はどうなっているのか？
Andy Walker氏：GDPRのような個人（と企業）の責任を追及する法律が追いついていない。ネット上での言動を追及されることは非常にまれだ。問題を理解せず触れようとしない政府と、規制緩和とアカウントのブロックでしか人々に責任を持たせることのできない大手テック企業、というのが現状だ。残念ながら、ネット上でアカウントを失うことは、数百万人のフォロワーがいない限り、大きな問題ではない。そのため、ネットの世界では、説明責任が欠如しているように感じられるのだ。
InfoQ: 言論の自由と、それを支える大手テック企業についてどう考えるか？
Walker氏: 説明責任の欠如が本当に気になり始めるのはここからだ。イーロン・マスクのように、言論の自由を絶対視する極端な考え方もできる。しかし、そうでないことは分かっている。もし私が人通りの多い道に出て、通り過ぎる人たちを罵倒し始めたら、どうなるかはお分かりだろう。
また、物議を醸すような視点は、多くの人の関心を集めるため、高い利益を生むという問題もある。新聞が偏った見解を示すことで読者を獲得するのと同じように、オンラインでも同じことが起こる。ただ、それ以上にその傾向は強い。
言論の自由は良いことだと思うが、一方で、説明責任を果たさない言論の自由は非常に悪いことであるのを忘れてはならない。私たちはそれをネット上で見てきた。真実がますます重要でなくなっているように見える政治システムにおいて、それを目の当たりにしてきた。
InfoQ: 今後に期待することは？
Walker氏: 特に国境を越えた規制が強化されることを望んでいる。業界は、正確な情報を伝えることが重要であり、ユーザーを保護することが必要であると認識してほしいと思う。
トップダウンのイノベーションは本物ではないし、パンドラの箱を開けてしまったようなテクノロジーで直面する問題を解決することはできない。テック企業は、株主を幸せにするための道として、ユーザーの生活をより良くするためのツールを作るべきであり、株主のためにユーザーを犠牲にして価値を引き出すべきでない。