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Mark Lines氏,ディシプリンド・アジャイル・デリバリを語る

原文(投稿日:2015/02/27)へのリンク

間もなく開催されるAgile Indiaカンファレンスで,Mark Lines氏は,ディシプリンド・アジャイル・デリバリ(DAD/Disciplined Agile Delivery)に関する丸一日のワークショップを開催する。DADは,それぞれの組織の状況に応じたアジャイルとリーンアプローチの導入を支援すべく設計された,プロセス定義のフレームワークである。氏はScott Ambler氏と,“Disciplined Agile Delivery: A Practitioner's Guide to Agile Software Delivery in the Enterprise”を共著した,DAD創案者のひとりでもある。両氏はまた,認定機関としてDisciplined Agileコンソーシアムも設立した。

カンファレンスに先立って氏は,InfoQに対して,DADがどのような課題の克服を支援すべくデザインされているのか,認定の価値はどのようなものなのか,といったことを話してくれた。

InfoQ: 大規模で複雑なプロジェクトにスクラムを導入する場合,どのようなことが問題となるのでしょうか?

ソフトウェア開発は難しい作業です。スクラムは16ページのガイドで説明されていますが,企業のミッションクリティカルなアプリケーションのガイダンスとしては明らかに不十分です。そのため,これまでは,スクラムに対してExtreme Programmingやリーン,カンバンといった他のメソッドのアイデアを補足するやり方が,実践者任せで試されてきました。ですが,そのようなメソッドを断片的に寄せ集めて,何らかの理に適ったエクスペリエンスが出来上がったとしても,所詮は個人か,あるいは小さなプロジェクトチームにしか通用しない代物です。一度はチームレベルで成功したものであっても,それをタイプの異なる,数多くのチームに適用しようとすると,たちまち大きな困難に突き当たります。DADが提供するような確立した基礎がなければ,組織全体へのアジャイル適用が非常に難しいことは間違いありません。

InfoQ: そのような問題に,DADはどのように対処するのでしょう?

チームレベルでの有効性という課題に対処するために,DADは,これまでのアジャイルメソッドで証明されたプラクティスのハイブリッドで構成されています。スクラムなどのメインストリームのメソッドがソフトウェアの構築面にのみ注目しているのに対して,DADはライフサイクル全体に対処するという,統合的(cohesive)なアプローチを採用しています。DADフレームワークを正しく適用することで,分散型チーム,コンプライアンスや規則面での状態,ドメイン複雑性,大規模なチームといった,スケール面の問題にも対処できるようになります。

他のスケーリングアプローチ,例えばLeSS(Large-Scale Scrum)などの問題点のひとつは,それらがスクラム自体に依存している,ということです。スクラムベースのスケーリングは有効である場合が多いのですが,DADではスクラムを前提にはしていません。実際にDADには,4つの異なるライフサイクルがあって,リーンやExploratory(リーンスタートアップ),継続的デリバリといった他メソッドの要求にも対応します。

もうひとつ指摘しておきたいのは,DADはスケールアップ用のフレームワークであるという,誤った解釈のされていることが多い点です。大規模な運用に適しているのは事実ですが,小規模ないし中規模のチームで使用されることの方が多いのです。組織の抱える多種多様な状況に対して,アプローチをカスタマイズするためのガイダンスを提供するという,“プロセス決定のフレームワーク”がDADです。ひとつのスケーリングフレームワークが,すべての状況で最善ということはありません。幸いDADには柔軟性があります。“実用的なアジャイル”,と呼べばよいでしょうか。

詳しいことは,Agile India 2015カンファレンスのワークショップに参加して頂ければと思います。

InfoQ: DADを始めたきっかけについて,教えて頂けますか?

よい質問ですね。Scottも私も,アジャイル宣言(Agile Manifest)が書かれるずっと前から,アジャイルの技術を使っていました。名前こそ違いましたが,2001年よりも何年も前から,反復的,段階的なソフトウェア開発を行っていたのです。ScottがIBMにいた頃,自身のそれまでの実績に,その他のメソッドで成果として証明されたテクニックを統合して,DADを作り上げました。フレームワークに関する書籍を共同で執筆すると決めたのもその頃です。ただし,多くの人が思っているのとは違って,DADはIBMのものではありません。DADのメンテナンスと開発を担当しているのはDisciplined Agile Consortiumです。

InfoQ: DADの提案するハイブリッドアプローチに対して,あなたがコーチングしたチームの反応はどのようなものでしたか?

間違いなく言えるのは,DADが何であるかを本当に理解したチームは,DADに非常に満足している,ということです。プロジェクトチームがアジャイルやリーンで効率的になるために必要なことと,チームないしプログラム間のコラボレーションに企業が求めることのギャップを埋めるのが,DADなのです。

InfoQ: 認定についてはどう思われますか?実践者にとって,どのようなプラスになるのでしょう?

Scottも私もこれまで,アジャイルの認定スキームを公に批判してきましたから,私たちがDADの認定プログラムを開発したことについて,驚いた人もいます。私たちは認定が価値のあるものだと判断しましたが,プログラムは信頼できるものであることが必要です。認定自体には,知識や経験,コミュニティの関与に至るまで,何段階かの帯(ベルト)に分かれたプログラムがあります。DADプロジェクトでの実務経験を証明するような初級の帯もありますし,コーチングや組織的なDAD移行経験を実証する有段者の帯もあります。

実践者にとってのメリットという点では,DADを一通り習得していると実証できる人を雇用したい企業が,DADの原則をプロジェクトに適用したという証明を求める場合が考えられますから,アジャイル実践者にとっては,履歴書に載せる価値のあるものになります。

必須ではないのですが,DADワークショップへの参加は,黄帯の認定テストの準備段階としてはよい方法です。さらに,ほとんどのDADワークショップには,無償の認定テストが含まれています。認定プログラムに関する詳細については,www.DisciplinedAgileConsortium.orgを参照してください。

 

 

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