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完成していないソフトウェアの運用コストを算出する - easyJetのJohn Davis氏とのQ&A

原文(投稿日:2017/05/26)へのリンク

6月5日と6日、ロンドンで開催されるDevOps Enterprise Summitにおいて、easyJetのリードアーキテクトであるJohn Davis氏が、“Calculating the Operations Cost of Software You Haven't Developed”と題した講演を行なう。InfoQはDavis氏と席を共にして、ITプロジェクトを実施する従来型組織がよりコラボレーティブな“DevOps”対応アプローチに移行するにはどうすればよいのか、プロジェクト管理やコスト管理はどう変わるのか、既存サービスの将来的なコストの予測にマイクロサービスや自動化されたパフォーマンステストをどう活用すればよいのか、などについて議論した。

主な内容:

  • DOESでの講演でDavis氏は、プロジェクトの成功を予定期間や予算範囲よりも、顧客や業務上の成果と関連付けることを提唱する。
  • プロジェクトのコスト見積の恐ろしさは、プロジェクトが従来型ITフレームワークの範疇で動作するものであっても、あるいは“DevOps”を運用する企業内で実行されるものであっても変わらない。
  • マイクロサービスの備える有限性により、初期コストの見積は比較的容易である。また、自動化されたパフォーマンステストからは、既存サービスの将来的コストを推測することも可能である。
  • 犠牲を出すことなく“埋没費用(sunk cost)”の問題を取り上げるためには、非難をしない文化が必要だ。さもなくば、社内政治がそのような問題の顕在化を妨げるだろう。
  • 問題となるメトリックのひとつは“ビジネス上の仮説を構築してから、それを証明ないし否定するための実証データを取得するまでの時間”だ、とDavis氏は考えている。
  • 組織全体を通じた関与が必要であるとは言え、DevOpsとは結局、ビジネスとITの目標を合わせることであるのだから、アプローチの名前は“BusIT”にするべきだ!とDavis氏は提唱する。
  • DevOpsコミュニティの一員になることには、間違いなく価値がある。 カンファレンスに出席し、議論に参加し、アイデアを分かち合おう。

 

インタビューの全内容を以下に紹介する。

InfoQ: John、InfoQへようこそ!London DevOps Enterprise Summit(DOES)で行なう予定の講演について、概要を説明してください。セッションに参加することで、どのようなものを得ることができるのでしょう?

John Davis: 分かりました。要約すれば、コストの見積は怖い、ということです。運用コストもこれに含まれます。これらのコストをより適切なものにする方法については後ほど議論しますが、予測が必要であることに変わりはありません。その後は、マイクロサービスを使用して見積を簡単にする方法や、パフォーマンステストの自動化から既存サービスの将来的コストを算出する方法などについて議論します。大規模なプログラムに関わっている人たちにとっては、これらのコストが数十万から、場合によっては数百万にまでになる可能性があるので、正確な予測は不可欠です。

InfoQ: 企業が’DevOps‘の作業方法に移行するためのコストが話題としてあがりましたが、DevOpsという言葉自体が使われ過ぎていて、多くの人たちからさまざまな意味で捉えられている状況を考えた時、そのようなコストはどのように計算すればよいのでしょう?

Davis: それよりも、DevOpsに移行することでコストがより明確になる、トレーサビリティが 確立する、などの話題を、ビジネス機能からデリバリコストまでを対象として話すつもりです。これを踏まえた上で、私はプロジェクトの成功を、期間内ないし予算内での完成といった資本の有効活用に関することよりも、顧客あるいは運用上の成果の方に結び付けたいと思っています。

InfoQ: 年間予算や会計項目といった従来の焦点は、コストに関する課題にどう影響するのでしょう?あなたの経験から言って、既存の‘レガシ’ハードウェアにロックインされた資本に関連する、いわゆる‘埋没費用の誤謬(sunk cost fallacy)’は頻繁に見られるものなのでしょうか?

Davis: 年間予算は大きな要因で、講演でも取り上げているものです。ライフサイクル、実験と活用など、さまざまなフェーズ毎にそれぞれの予算が必要なプロジェクトのためのモデルに移行する必要があります。マイクロサービスと私の論じたアプローチを使うことによって、この予算の運用コストの見積に経験的データを使うことが可能になるのです。

“埋没費用の誤謬”は存在し、単なる誤解以上に複雑になります。犠牲を払うことなく、“埋没費用”の問題を進んで提起できるためには、非難をしない文化が必要になります。さもなくば、社内政治がそれらの問題の表面化を阻止しようとするでしょう。

InfoQ: パブリッククラウドやPaaSの人気が高まっていますが、企業にとってプラットフォームの構築、あるいは購入/レンタルを行なう上で、重要なデータと意思決定ポイントは何でしょうか?

Davis: パブリッククラウドが実現する柔軟性は、ほとんどの企業にとって、IaaSが障害とはならないことを確信させるものだと思います。それに比較すると、ベンダにロックインされる恐れのあるPaaSには、まだ議論の余地があります。コンテナ化によって緩和されてはいますが、それでもまだ、サーバレスのようなベンダ特有性を避けることが困難なPaaS製品がいくつかあります。オンプレミスとクラウドベースのソリューションの選択に、資産として所有しているレガシアプリケーションの数が影響することは間違いありませんが、そのような場合でも、Strangerパターンのようなテクニックを使うことで、クラウド移行を進めることは可能です。

InfoQ: 新しいプラットフォーム(社内あるいはパブリッククラウド経由のいずれにおいても)への移行において、事前および実施中に企業が確認すべきメトリック/KPIには、どのようなものがありますか?企業にとっての成功を示す、‘重要な1指標’は何でしょう?

Davis: おもな課題は2つあります。ひとつは“重要な1指標”が、間違いなく企業毎に違うことです。個人的には“ビジネス上の仮説を構築してから、それを証明ないし否定するための実証データを取得するまでの時間”を挙げたいのですが、企業によって大きな違いがあるかも知れません。

もうひとつは、このようにさまざまなデータポイントを監視ないし追跡する方法です。しかしながら、監視に関する世界では今、非常にエキサイティングなことが起きています。ここ最近、異機種データポイントを比較分析する事例が増えているのです。現時点ではアプリケーションやインフラストラクチャ、ビジネスなどが対象ですが、これをもっと拡張して、プロジェクト管理ソフトウェアのデータを含めたいと思っています。これによって“アイデアから結果までの平均時間”というラインに沿った、非常にクールなメトリックを生成することが可能になるのです。

InfoQ: 手短に言って、迅速な行動を目指す現代企業に対して、DevOpsはどのように関わっていくと思われますか?あなたの経験から、一般的なエンタープライズにおいて重要なのは、組織の変革と技術的な変革、どちらのニーズなのでしょう?

Davis: 非常に深く関わっていくと思います。アプローチとしてはDevOpsと呼ばれていますが、実際にはビジネスとITとの目標の調和が主眼だと思っています。もしかしたら“BusIt”と呼ぶ方がよいのかも知れません!

正直なところ、企業組織の変革と技術的変換を比較して、どちらかがより重要であるとは言えないでしょう。どちらか一方だけを解決しても、それは失敗になるのです。求められているのは、要件やチーム、アーキテクチャに対して適切な組織構造であること、これを高いレベルで実施するための活動に参加することです。

InfoQ: 今日は時間を頂いて,本当にありがとうございました。他に何か,InfoQ読者に伝えておきたいことがありますか?

Davis: とにかく、DevOpsコミュニティへの参加をお勧めします。カンファレンスに参加し、議論に加わって、アイデアを分かち合いましょう。

DevOps Enterprise Summit Londonカンファレンスは6月5日と6日、QE II Conference Centreで開催される。詳細はIT Revolution EventsのWebサイトを見てほしい。

 
 

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