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Nexus Guideがアップデート、統合性と透明性を重視

原文(投稿日:2018/03/01)へのリンク

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メジャーアップデートされたNexus Guideのおもな変更点は、Nexus Integrationチームの役割の明確化、スケールアップ時の透明性に関する説明、2017年版Scrum Guideへの適合などだ。Nexus Guideは、組織がスクラムをスケールアップする際に利用するフレームワークである。

アップデートの詳細はNexus Guide Update - January 2018で確認できる。

Scrum.orgのプロダクトオーナであるPatricia Kong氏に、今回のNexus Guideの変更と、Nexusの導入によって得られるメリットについてインタビューした。

InfoQ: Nexus Guideのおもな変更点は何ですか?

Patricia Long: 2018年1月17日、Scrum.orgは、Nexusフレームワークでスクラムをスケールアップするためのルールを含んだNexus Guideの、初のアップデートをリリースしました。1つないし2つのチームでスクラムを使って、部分的なアジリティやデリバリの成功をすでに経験している組織に対して、それをスケールアップする過程を支援したいと以前から考えていました。それには、チームとチームの作業を結び付けて、それらを織り合わせるフレームワークが必要です。それを行なうのがNexusなのです。

それ以来、私たちはNexusを使っている組織と協力して、より広範なスクラムコミュニティの経験から実装について学びました。Nexus Guideの今回のアップデートでは、重要な変更のひとつとして、Nexusインテグレーションチームの役割の明確化に着目しました。それというのも、この役割が多少の誤解を受けているように感じていたからです。混乱のかなりの部分は、チームの名称から来ていました。“インテグレーション”チームと名乗りながら、Nexusインテグレーションチームは、実際の統合作業には責任を負いません。私たちがインテグレーションを重視するのは、スプリント毎に少なくとも1回、統合的な“Done”をインクリメントする責任を、この役割が担っているからです。その目標を達成するためにNexusインテグレーションチームは、コーチングやコンサルティングを通じてNexus全体を支援し、依存関係やチーム間の問題への認識を促します。Nexusインテグレーションチームが新たなマネジメントチームであるという誤解もありますが、そうではありません。このチームのメンバはNexusの各スクラムチームから個々に参加している場合が多く、各チームの代表として説明責任を負っています。

スケールアップに関する活動の中で、皮肉なことに一部の組織では、組織が肥大してプロセス駆動型になり、結果としてアジャイル性の向上とスケールアップの成功を妨げていることに気付きました。ここでスケールアップとは、 一定のタイムフレーム内でより多くの成果を上げることであり、また成功とは、より多くの価値を提供するという意味です。ここでは透過性が有効であり、今回のアップデートの大きな前提でもありました。透過性の向上に重点を置いて、Nexus Guideにいくつかの語彙の追加と修正を行ないました。例えば、“統合されたアーティファクトは、Nexusの統合作業の現在の状況を表します”という文章では、“現在の”が新たに追加されています。この言葉を追加したことで、統合されたアーティファクトのインクリメントがより透過的な会話を生み出す、ということが明確になります。

もうひとつの大きな変更点は、2017年11月に行われたScrum GuideのアップデートにNexus Guideを合わせたことです。最新のScrum Guideアップデートの大きなテーマは、継続的改善でした。これらの変更を確実に反映したいと思っていました。例えば、スプリントレトロスペクティブの意味の変更を反映させるために、Nexusのスプリントレトロスペクティブの定義を更新して、“Nexus自体の検討と適応を図り、次回スプリントにおける継続的改善を確実なものにするための改善計画を立案する正式な機会である”という一節を追加しています。

最後の大きな変更点として挙げたいのは、Nexus GuideにCreative Commonsライセンスを追加したことです。私個人としては、これが最も有意義なアップデートでした。このライセンスはスクラムと同じように、Nexusが世界中のチームや組織に対して、コンテンツの共有と再利用のために無償提供されるということを意味します。ソフトウェア提供という職業を改善するという目的に対して、スクラムとアジャイルのコミュニティが支援してくれたことを感謝したいと思います。

Nexus Guideの変更に関しては、私の先日のブログ記事“Nexus™ Guide Update, January 2018”や、こちらの変更ログでも詳しく説明しています。

InfoQ: Nexusインテグレーションチームの役割と責務は何ですか?

Kong: Nexusインテグレーションチームに相当する役割は、スクラムには存在しません。このチームは、Nexusの中の各スクラムチームを代表して責任説明を持ち、統合された“Done”をスプリント毎に少なくとも1回、確実にインクリメントすることを目的としています。まさにNexusをインテグレーションするのです。

Nexusインテグレーションチームのメンバシップには、プロダクトオーナやスクラムマスタ、1人以上のNexusインテグレーションチームメンバが含まれています。このチームのメンバは、多くの場合、Nexusのスクラムチームのメンバでもあります。このような構成にすることで、Nexus内の各スクラムチームからのボトムアップのインテリジェンスの必要性をサポートします。プロダクションオーナを除くこのチームのメンバは、将来的に変更される可能性がありますが、Nexusの取り組む対象が時間とともに変化する可能性を考えれば、これは理に適ったことです。

一般的に、NexusインテグレーションチームはNexusに対して、ファシリテーションとコーチングを提供します。価値の提供という最終目標に対してNexus全般を支援するために、全体として、常にチーム間の依存関係や問題に重点を置いています。

InfoQ: チームが開発するプロダクトを統合する上で、推奨できるプラクティスは何かありますか?その中で、特にお勧めなものはどれでしょう?

Kong: ひとつの製品を複数のチームで開発する場合のスケーリングには、重要なものが2つあります - 期待(Anticipation)と具体化(Reification)です。この場合の“期待”とは、複数のチームが統合してNexusを形成することです。“具体化”とは、スケールアップのイニシアティブを機能させるために、依存関係の特定と排除を継続的に実践し、すべてのレベルにおいて業務を統合し、定期的かつ頻繁に見直すためのプラクティスを導入することです。ひとつのNexusとそのチームに対して何が有効であるかは、組織の活動対象やその環境によって違います。

Nexusに関するScrum.orgのグラフィックには、さまざまな役割やイベント、成果物に対してラベルが付けられています。たくさんのチームがある円の中心には歯車の付いた三角形があって、頻繁な統合や受け入れテスト、継続的デリバリ、技術的負債の最小化など、隠れた依存関係が成果を損なわないために必要なプラクティスを表しています。

スケールアップのイニシアティブにおいて十分に考慮されていないと私が思うのは、スケールアップの前にできること、スケールダウン(descaling)の概念(チーム数の削減)、成果と価値の測定です。いずれにせよ最終的には、チームや組織が、自分たち自身のために有効なスケールアップイニシアティブを試さなくてはなりません。

InfoQ: Nexusガイドでは透明性を強調していますが、これはなぜ重要なのでしょう、また、透明性を確立するために何ができるのでしょうか?

Kong: アジリティの精神と、検査と適応のサポートの下では、透明性こそがポジティブな破壊者であり、関心の触媒であると思います。透明性の欠如の行く先は不信と不安です。これは2人であれ、10チームであれ、あるいは組織全体であれ、あらゆる関係性において重要です。Nexusにおいて透明性を向上させるひとつの方法は、作業とチーム間の依存関係を可視化することです。これはチームの共通理解を構築する上でプラスに働きます。透明性を浸透させるもうひとつの重要な方法は、率直なフィードバックを出し合うことです。ただしこれは、言うほど簡単ではありません。

InfoQ: Nexusを適用することによるメリットはどのようなものでしょう?

Kong: Scrum.orgサイトではいくつかのケーススタディとWebセミナで、さまざまな組織でNexusを導入した経験を紹介しています。これらケーススタディと私自身の経験から感じたメリットは、すぐに始められるということです。チームや組織のこれまでのスクラム経験を基盤として活用することで、Nexusへと自然にスケールアップすることが可能になります。スケールアップしたスクラムもまたスクラムなのです。

チームの統合能力、検査能力、適応能力も向上し、価値の高い統合プロダクトをより早く顧客に届けられるようになります。Nexusにおいて依存関係の顕在化と最小化が重視されていることが、統合プロダクトを提供する上で鍵となっているのです。

チームが以前より幸せになったと言っていることも、Nexusを使用する組織に共通して見られる大きなメリットです。ひとつの目標に向かって行動する時、人は互いに感謝し、チームワークの精神を感じるものです。結局のところNexusは、人や物との関係であり、つながりなのです。

 
 

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